バレル研磨の基礎

バレル研磨とは

そもそもバレル研磨とは、精密部品などのワーク（製品）とメディア（研磨石）、コンパウンド（研磨剤）、水を槽になったタンク式容器に入れて製品精度をより高度にするために行います。

バレル研磨の種類によっては機械で振動や回転をかけており、メディアとの摩擦を利用してワークへの光沢やバリ取り、スケール除去を行っています。バレル研磨は回転や振動でワークとメディアをかき混ぜることになるので、ワーク同士の干渉による打ちキズや擦りキズといった外観品質が懸念されますが、機械の回転速度や振動、メディアのサイズと量、水量、ワークの量といった加工条件を適切にすることで防げます。

このことからバレル研磨は、研削加工で最終工程に仕上がっているワークにも使用可能です。光沢が出ている綺麗な表面となることで、外観検査でのNG率を減らし、不良率削減にも一役買うというメリットを生みます。

外観が厳しい精密部品の加工では、研削工程でワーク1個ずつの投入・排出でキズを防ぐこともありますが、これでは品質を保てても工数やコストがかかってしまいます。バレル研磨は高品質を保ちながら一度に投入する量も多く、大量生産にも向いていますので、結果的にコストダウンも実現できます。

メディアとコンパウンドの役割

ワークと水は一般的に理解しやすいですが、バレル研磨に使用するメディアとコンパウンドがどういうものかみていきましょう。

・メディア
研磨石ともいい、ワークと干渉して摩擦を起し、表面の光沢やエッジ、スケールの除去を行います。メディアの成分や材質にはアルミナ・セラミック・プラスチックが主にあり、形は三角、円錐、円形が一般的です。ワークの仕上がり具合やサイズによってメディアを検討する必要があります。

・コンパウンド
コンパウンドは加工の働きを助ける研磨剤として、粉末と液体があります。コンパウンドには研磨の性能を高める洗浄効果があります。また、バレル槽でのワークの錆や腐食を防ぐ防錆効果があります。さらに、ワークとメディアが干渉する際の衝撃を和らげるクッションの働きもあります。

▼こちらは、バレル研磨後の部品取り出し動画です▼
　　　　　　　　　

バレル研磨の種類

バレル研磨もそれぞれ加工種類があって特徴が異なります。

・回転バレル研磨
コスト的にも最もポピュラーなバレル研磨です。8角形の槽を回転させるとワークとメディアが滑落する場所に流動的な槽のスポットが発生し、ここで摩擦が起こり表面加工を施します。

作業部署によっては槽の形状から八角（ハッカク）と呼ばれており、掃除やメンテがやりやすいのも特徴といえるでしょう。ただ、機械は横向きのため、密封しないとワークやメディアが飛散しますので、ワークの状態が途中で判別できないデメリットもあります。

・振動バレル研磨
バレル槽の下部に大きなスプリングが付いており、上下に動く振動モーターと回転による遠心力でバレル槽全体に流動を作って摩擦を行います。キズが付きにくく、お椀型の槽で加工途中でも上からワークを確認することができます。

大きいワークも加工可能ですし、大量生産にも向いています。デメリットとして振動による騒音が大きいのが挙げられます。

・遠心バレル研磨
バレル槽が複数個から成り立ち、全体が公転しながら一つずつの層が逆方向に自転することで強い遠心力を引き出します。高速回転させることで、短時間で回転バレル研磨や遠心バレル研磨よりも高精度の加工を実現しています。

精度的には十分ですが、デメリットとしてバレル槽が複数個あることから、大物を投入することができず、密封状態なのでワークを加工途中で確認することができません。

まとめ

バレル研磨は槽にワークとメディアやコンパウンドを投入し、摩擦を起こすことで光沢やエッジ除去、バリ取りの加工を行います。精密部品などの製造業では、年々厳しくなる客先要求の品質を満たすためにも、コストダウンを実現できるバレル研磨での加工方法を検討するのは長期的にみても良策といえるでしょう。